神戸異人館今昔

17.中山手教会の上の路地(焼失)

中山手教会の上の路地

加納町三丁目から山手に、クルス地蔵を左手に見て西行すると、中山手教会の前に出る。その二本の塔、すなわち正面近くの右側に登る小さな路地がこの絵の場所である。今は左右、文化アパートといわれるような二階建てで、このころとは全然ちがう趣きになってしまっている。

この絵の右の一ばん手前の鎧窓は桃色で塗られ、日本人では到底考えられない色だったが、結構、建物や付近とマッチしていて、とてもおもしろかった。

次の三つ鎧窓の家はダークグリーンで、一番奥が黄みどりで、みなよく調和していた。というのは、鎧窓や板壁をぬり変えるときは、近所隣り両三軒のマダムたちが集まって、お互いに相談して色の調和を考えていたからである。

考えてみれば、まことに悠長な、よき時代だったものだ。この絵は戦前の絵だが、当時の神戸にはほんとにたくさんの異人館があって、私が一目惚れした町だった、と、時代の変遷をつくづくと思うのである。