神戸異人館今昔

11.桃色の鎧窓の家(現存)

桃色の鎧窓の家

この家は、北野交番の上を東へ五十メートルも行き、ラブホテルと英米日仏伊のきれいな国旗をはためかせているレストランとの間を抜けて、さらに小さな路地のきつい坂道をのぼり、上の北野のランデブー道に出る前の一軒手前を右折した突き当たりにあり、北野町三丁目小林邸の西側に今も現存されている。

赤い素焼きの火道のついた煙突は取り去られ、鎧窓もなくなって、まったく昔の面影はない。一階には桃色の鎧窓が二つ残っているが、一本の青桐も切倒してしまい、あわれである。

昔はこの家に白系露人の音楽家が住んでいて、時どきユーモレスクやサンカンティヌの曲を弾(ひ)いているのがきかれてのどかであった。

このように異人館の特徴をなくした異人館になったり、山本寮の、角と丸の出窓のある家が取り毀(こわ)されてしまっては神戸市の顔も消えてしまうであろう。私は、市がもっと保存のために力を入れ、保護条例を出して欲しいと願うものである。