益喜を語る

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「強情っぱり」「名画は頑固の産物」

小磯良平さんの葬儀が、昭和六十三(一九八八)年十二月十九日、故人ゆかりの日本基督教団神戸教会でしめやかに行われたが、このときの葬儀委員長=金井元彦さんの、友人代表としての『葬送のことば』がまた、小磯さんの思いがけない人柄を彷彿とさせて、すてきに妙である。

小磯君。神戸二中以来の長い良い友情を、本当にありがとう。

小磯君。考えてみるとキミの人生というのは、キミの画業そのままに、頑固を貫いた人生だった。戦後、アメリカやヨーロッパから、新しい美術の流れがやってきて、多くの美術家たちが作風を一変させた時代があったが、キミの清澄ともいえる美しい画像は、微動だにしなかったもんなぁ。…。

小磯君。キミの画業については、すでに日本国中の多くの方々から、数多くの賛辞が寄せられているから、ボクにはとてもそれ以上のことは言えそうにない。だからボクは、晩年キミと楽しんだゴルフ談義で、キミの人柄を偲び、「葬送のことば」としよう。…。

頑固といえば、キミは、ゴルフだってそうさ。キミのゴルフは、実に下手くそだった。「そんなフォームでボクに勝とうたって、無理だよ。一度プロに習ってフォームを修正してから、ボクに挑戦してみろ。」と、何度ボクは忠告したことかね。キミ聞いてるかい。いや、キミのことだ、耳をふさいでいるに違いない。あのときだってそうだよ。