小松益喜を語る

伊藤誠 南風対談 わが青春の日々 森田修一
廣田生馬 和田青篁 父を想う

「戦争画はボクの作品とは認められぬ」

なお、冒頭紹介した竹中郁『小磯良平=人と作品』に「(小磯の「戦争協力画」には)残酷な格闘や屍体を避けてある…」とあるが、小磯良平さんはただ一点だけ、残酷な格闘や屍体を描いた作品らしきものを残されている。「…らしき」と思わず記してしまったのは、 ともすれば凄惨をきわめがちな戦闘場面を「南方風景」のなかに溶け込ませてしまおうとする作家の意図が、あまりにも明白なこの作品のせいと思われる。『マレー前線における偵察隊の活躍』が、この「…らしき」作品なのである。

その画面には、戦前世代の方ならご存じの、当時は「斥候兵」と称した敵情偵察任務の二三人連れ(二三人だと多方向に視野が広がるのと万一誰かが敵に倒されても残る兵士が生還し敵情報告をなし得るため)の兵士が、偶然敵の斥候と遭遇し死闘を演じる場面が描かれている。とにかく、敵(浅手のヘルメットで英連邦軍と分かる)の斥候を皆殺しにしなければ、友軍の動静が彼方に知れてしまう。むろん銃声によっても敵に味方の存在を察知されるから、小銃やピストルも使えない。銃剣と日本刀(敵はサーベル)でもって無言の死闘が展開され、日本兵が敵を殲滅しようとする場面である。