小松益喜を語る

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廣田生馬 和田青篁 父を想う

「画家は作品を残す。アトリエは…。」

K教育次長の「知事あて要請」の概要説明が終わるまで、めいそう静かに耳を傾けられておられたが、しばらく瞑想された後、「結論としてのボクの考えだが、…」と、金井館長の口をついて出たのが、次の言葉であった。小磯君の名作は、彼の腕が描いたもので、アトリエが描いたもんではないんだなぁ。

K教育次長が、唖然という、文字どおりの体でおられると、美術館は、小磯君の描いた作品をいただくことだけで、それでいいのじゃないかね。そう、館長の私がかたく申しておったと、知事にお伝えしておいてくれたまえ。

「小磯君の考えは‥」とは、一言もおっしゃらなかった。すべてはご自分の責任でハラをくくられたのである。

この言葉だと、要請をした人たちも要請を受けられた知事にも、傷が付かない。さらに結果として、盟友=小磯良平さんの真意をかなえることにもなる。人の上に立つ人物の大きさというものを、こんなにも思い知らされたことは、いまだかつてない。小磯さんは自ら信ずるに足る、すばらしい親友をお持ちになったものである。

なんか、「判じもん」みたいなこと言いはったけど、森田はんあんたどない思う。今の金井先生の言葉…。と、館長室を出てから、K教育次長が不思議がられたので、事の真相をお伝えしたうえで、「貝原知事には金井館長のお言葉どおりお伝え願いたい」旨、私はよろしくお願いしたものである。