権力側に就くよりも民衆のイノチを最優先させた人が坂本竜馬であり、その血を強く引き継いで異人館を描き残すことにイノチをかけた人が小松益喜さんであることは、かつて『小松益喜展』に寄せられた、作家=陳舜臣氏の以下の言葉からも想像できる。
イーゼルと絵具箱をかついで、異人館街を小走りに急ぐ小松さんについて、である。
…。はじめ私は、小松さんの美意識が彼を走らせているのだろうとおもった。だがそれだけではないような気がしだした。美意識以外のなにが彼を走らせるのか。小松益喜の絵をみるたびにそれを考える。いまだに解答は出ないが、おそらくそれは人間が生きて行くうえで、大切なものであり、イノチと直結しているなにかであろうとおもう。建物が描かれているが、そこからイノチのにおいが漂ってくるのである。…。

