益喜を語る

伊藤誠 南風対談 わが青春の日々 森田修一
廣田生馬 和田青篁 父を想う

「左翼運動の後遺症」をかかえて

小磯良平さんを「美術界の貴公子」と言い、小松益喜さんを「画壇の異端児」扱いするような、そんな風潮がひと頃あった。どちらの表現もまったく当を得ていないことは、この記録を読み進んでいかれるうちに、よくお分りになることと思う。

ただ、小磯さんの常軌を逸した言動というのは、いっさいお目にかかったことがない。その反面、小松さんの場合、常軌を逸した言動は、枚挙にいとまがない。

さきに引用した、新聞社への「抗議署名行動」などもその一例だが、ときおり阪急六甲から同じ電車で同席することがあって、「久しぶりで…」とかなんとか、歓談している最中に、突然私の耳元に、小松さんはささやかれるのである。

森田君。ねぇキミ。あそこに立ってるヤツ。あれ、警察の密偵(なんと古い言葉)だ。きっと、そうに違いない。…。次の駅で降りたほうが、よくはないか。いや、降りよう。キミ、降りたがいい。…。

また、別の日の、アトリエでの話。

話の途中、失礼だが、どうもボクのカンだと、この部屋に盗聴器が仕掛けられてるらしい。もう、これ以上話はよしにして、解散しよう。…。