キミとの約束、はたしたぜ。どうだい!。これならキミ、文句ないだろう。…。
文句なしだったら、今度はキミが土下座したまえ。(私が土下座しかけると)冗談、冗談。冗談を、本気にする人がありますか。愉快な人だねぇ、キミという人は。…。
小松さんの得意満面の大声に、二階でやすんでおられた奥さんのトキさんも起きだして来られて、「済みませんねぇ、夜中に呼び出したりしてこの人、去年あなたがおっしゃったこと、よっぽど堪(こた)えたらしくてね。…だから、今度のこの作品が出来たら、一番にあなたに見ていただくんだといつも言ってましたから、夜中のご無礼をカンニンしてやってくださいね。なんしろこの人、絵を描くほかは、世間様の常識というものをわきまえない人なんですから…」
この年の 『五〇人展』出展者目録に、ふたたび小松益喜の名がよみがえったことは、言うまでもない。

