益喜を語る

伊藤誠 南風対談 わが青春の日々 森田修一
廣田生馬 和田青篁 父を想う

「五〇人展落選事件」に関わって

さて、その年の『五〇人展』出展者新聞発表後のこと、小松さんから「抗議署名簿」が新聞社に届けられたことを嘲笑揶揄(ちょうしょうやゆ)する噂話を聞き付けた私は、わが家から五分の小松アトリエへ急行する。画家や美術ジャーナリストたちが、陰口はたたいても表向きは「酷評」を遠慮するほどの、カンシャク玉が破裂すると手の着けられない小松さんをつかまえ、今から考えるととんでもないことをしでかしたと思うが、私は大喝一声した。小松さんの純真無垢ともいえる人柄を心底愛しているが故にであろう。

小松先生ともあろう方が、何という、はしたないマネされたんですかっー。

それから後は、小松さんに向かって、どんな言葉を吐きかけたのか、ほとんど記憶にない。「絵描きなら、絵で勝負なさったらどうですか」くらいのことは言ったと思うが、すごい形相で、唇震わせて、感情むき出しであったろうから、何をガミガミ言ったのか、まったく覚えがない。気がつくと、あの小松益喜さんが、絵の具が飛び散って汚れたアトリエの床に土下座して、平謝りに謝っておられる。

 

すまん!キミの言うとおりだ。面目ない。カンベンしてくれ。このとおりだ。…。

来年の新制作展には、大作を出すことを、キミに約束する。昔の『英三番館』を超えるようなヤツをだ。きっと約束する。だから、今度したことは、カンベンしてれ。頼む。…。