この額が、絵と合ってないんだよな。作者が、額を外すというなら、入選!。というのもあって、当然この作者もトンカチ持って、 会場へ飛んできたものである。
吉原さんはというと、「ボクが具象の方を…」などとおっしゃりながら、昔とった杵柄(きねつか)からか、南和好さんの幻想絵画や、シュールリアリズム調の絵などを採り上げられるので、「小磯さんの審査」を目論んで出してきたと思われる写実的人物画が、ほとんど落選の憂き目に会うのであった。もちろん、審査員におもね個性を殺してしまった作風を、先生方に見抜かれてのことであったが…。
この、第一回兵庫県美術公募展入選者の新聞発表直後、共催の神戸新聞社めがけ、「ほんとに小磯良平さんが審査されたのか」と、「洋画」落選者の、抗議の電話や投書が殺到したという。後日、伊藤誠さんからこの話を伝え聞いて私は、M係長やH社会教育主事たちと、苦笑を禁じ得なかったものである。
小磯良平さんの絵をよく見ていると、その見事なまでの写実美とともに、小松さんの言葉ではないが、「一分のスキもない」その構成美に、打たれることがある。つまり、小磯さんは、抽象絵画の基本であるコンポジシオンにおいても、その天才ぶりをいかんなく発揮されたといえるだろう。

